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培養軟骨の移植について

(整形外科 安藤 健夫)

軟骨とは?

軟骨組織はケガなどで一度損傷を受けると自然には治らない組織です。
もし、手を切っても傷は治りますし、骨折してもきちんと処置を行えばつながります。でも、軟骨は治らないのです。それは、軟骨組織には血管がないためです。
血液には傷を治すのに必要な細胞が含まれているうえ、細胞を増やすための栄養も含まれています。軟骨組織には血管がないため、軟骨組織が損傷を受けても細胞や栄養も供給されないので軟骨は治らないのです。
軟骨がどのようなものか、ご存知でしょうか?軟骨というと、骨の軟らかいものと思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、実は全く違うものです。軟骨は膝や肘などの関節の骨の表面を薄く覆っていて、関節の動きを滑らかにする役割を担っています。関節の軟骨は硬くて弾力性があり、その滑らかさはアイススケートで氷上を滑る際の10倍ともいわれています。このため、軟骨の耐久性はきわめて高く、関節を動かしても軟骨組織が磨り減ることはほとんどないのですが、ケガや変形性関節症で軟骨が失われると歩行も困難なほどの痛みを生じます。
この軟骨の損傷については、影響の少ない場所の骨と軟骨をごく小さく切り取り、軟骨が欠けた部分にはめ込む方法がありましたが、特に損傷が大きい場合、有効な治療法はありませんでした。

平成25年4月より保険適用へ

自然に治ることが難しい軟骨ですが、軟骨細胞には増殖する能力があります。 近年、患者さまの軟骨組織の一部を取り出し、環境を整えて細胞を増殖し、増殖した細胞を移植する方法が確立されました。そして、平成25年4月1日、「膝軟骨」について自家培養軟骨の使用が保険適用となりました。これにより、損傷が大きい場合においても、有効な治療がどなたでも受けられるようになりました。
しかし、自家培養軟骨の使用については、厚生労働省により以下の施設基準(使用するための条件)が設けられました。

  1. CT撮影及びMRI撮影の施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出ていること。
  2. 運動器リハビリテーション料(I)又は運動器リハビリテーション料(Ⅱ)の施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出ていること。
  3. 関節軟骨修復術を含む骨切り術、関節鏡下靱帯再建術、半月板手術、人工膝関節置換術等の膝関節手術を年間100症例以上実施していること。
  4. 整形外科の経験を5年以上有しており、関節軟骨修復術10症例以上を含む膝関節手術を術者として100症例以上実施した経験を有する常勤の医師が1名以上配置されていること。
  5. 所定の研修を修了している常勤の整形外科の医師が1名以上配置されていること。

当院整形外科の対応

平成25年4月1日現在、当院は上記施設基準の①~④についてはクリアしていましたが、自家培養軟骨使用のための所定の研修を終了した整形外科医師はいませんでした。

「私たちは新しい医療技術、知識の習得につとめ、地域医療に貢献します。」
これは当院の病院理念の一つです。当院病院長の安藤医師はこの理念に基づき、自家培養軟骨使用のための所定の研修に参加、平成25年8月6日研修修了し、8月14日四国厚生支局に施設基準届出、9月1日より自家培養軟骨の移植ができる医療機関(受理番号:(自家)第1号)となりました。

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