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喫煙と小児喘息

(小児科 矢野 一郎)

はじめに

2001年の日本たばこ産業のホームページによると、我が国の喫煙率は男性52.0%、女性14.7%で、男女併せて32.7%で、喫煙人口は約3300万人でした。近年、喫煙率が低下傾向にあるとはいうものの、喫煙者は依然かなりの人数にのぼります。
喫煙に伴う健康被害のうち、子供で問題になるのは、まわりの喫煙者が吸ったたばこの煙りを2次的に吸う、いわゆる受動喫煙です。子供に対する受動喫煙の影響としては、喘息が悪化しやすいこと、肺炎、気管支炎にかかりやすいこと、最近、注目されている乳幼児突然死症候群のリスクとなることなどが知られています。今回は、受動喫煙が子供の喘息に及ぼす影響について、考えてみたいと思います。

受動喫煙が小児喘息におよぼす影響

受動喫煙が既に喘息に罹患している子における喘息を悪化させるという報告は多くみられます。ある報告では、母親がたばこを吸っている子では、肺機能の低下や気道過敏性の亢進が有意に認められました。さらに、同室内の喫煙量を減らすと、受動喫煙量が減少し喘息児の呼吸機能の改善につながったとの報告もあります。

妊娠中の母親の喫煙

妊婦の喫煙は、流産、死産、低出生体重児、先天異常、新生児死亡のリスクを高めることがすでに明らかになっています。また、妊婦の喫煙が胎児の肺の成熟を抑制し、出生後の喘息発症の危険因子となるとする報告もみられます。

まとめ

子供の喘息の日常診療では、ダニやペットに加え、たばこのなどの環境対策が非常に重要です。子供の喘息治療は、種々の薬により飛躍的に進歩してきていますが、いくら、高価な薬をのんでも、このような環境対策ができていなければ、なかなかその子の喘息はよくなりません。喘息発作がおこれば、学校を休んだり、友だちと遊べなかったりし、精神衛生上もよくありません。喘息をなおして、子供たちの生活を楽しく生き生きとしたものにしてやりましょう。その意味でも、妊娠中の母親、同室内の喫煙はやめましょう。

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